2018年版気象観測装置の風洞実験を群馬県太田市の矢島工業にて行った。風洞の中に気象観測装置を配置しいろいろな設置向きに対して風速がきちんと測定できるか否かを検証した。
結果は、風速15mを超えると風向の検知が逆向きになるという現象が確認された。が、これはプログラム開発時点で想定されている課題だった。
2018年版気象観測装置は、超音波を天板に向けて発射し、天板から反射してきた波を受信する構造となっている。そもそもが、40V必要な超音波センサへの送信波入力に対して15Vと十分な電圧を供給できていないこと、反射によって受信波は大きく減衰することから受信波の振幅が十分確保できないという課題がある。こればかりは構造上、及び回路に利用している部品の仕様上いかんともしがたい課題である。
レベルの十分とれない受信波を処理する際の問題について以下に説明する。

青の波形が受信波だとする。受信波の最初を検知するためにaという閾値を超えた瞬間で判断する。初めてa値を超えた点p1を受信波のはじまり、つまり送信してから受信するまでにかかった時間として検知する。
しかし、周囲の環境によって微弱な反射波の振幅はある程度揺らぐ場合がある。もし、上記の反射波の振幅が小さく揺らいだとする。すると、p1が検知できずに次のp2が受信波の最初として検知され、受信までの時間は t時間 だけ余分にかかった時間として検知される。
超音波の周波数が40kHzとすると、受信波のピーク間の時間 t は
t = 1/40,000Hz = 25μs
一方、超音波の伝わる速度は音速であるから概ね
340m/s
である。気象観測装置のセンサー間で超音波が伝わる直線距離はおおよそ175mmであり、その間を音が伝わる時間は
0.175m/340m = 514.7μs
これが、余分に 25μs かかる場合の音速を X すると、
0.175m/ X m = (514.7+25)μs = 539.7μs
X m = 324.25 m
25μs の差で音速にどれだけ変化がもたらされるかというと
340 m - 324.25 m = 15.75 m
要するに受信波の山が一つずれることで風速が 15.75m 増えたり減ったりしてしまうことになる。
この問題点は実はプログラム開発時点で認識しており、受信波の包絡線が信号として出力されるように回路を構成するとか、プログラムで周囲環境により閾値を動的に変動させるとか、様々な解決策を試みたが、どれも完璧な対応策には至らず時間切れとなってしまった。
苦し紛れの策として、無風状態の時に受信波を受信するまでの時間を T とすると、検知時間を
「 T ± 25μs 」の範囲内に限定して風速を算出するような論理でプログラミングした。
つまりは、風速 15m 以内であればかなり正確な値が求まるが、それを超えるとおかしな値になってしまうということ。
はっきり言って、お恥ずかしい限りであるが、限られた時間の中である程度の精度を出すためには致し方ない妥協策と思う。技術者として忸怩たる思いがあるが、貴重な経験として心にとどめておくことが大切だと考えるようにしている。


